名古屋高等裁判所 昭和60年(う)198号 判決
本件控訴趣意の要旨は、…中略…原判示第二の一…中略…の事実について,被告人が杉本美智代に交付した金員は、右杉本が選挙期間中にいわゆる電話作戦に従事して労務を提供してくれたことに対するいわゆる「パート賃」で…中略…あつて,いずれも単純労務に対する実費弁償金であり,選挙運動の報酬ではないのに、原判決が原判示第二の一のとおり認定判示したのは、事実を誤認したものである、…中略…というのである。所論にかんがみ,記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも参酌して,…中略…判断するに,前記被告人および杉本美智代…中略…の捜査官に対する各供述調書(前同)を含む原判決書挙示の関係各証拠によつて認められる所論杉本美智代の電話による投票依頼行為…中略…の具体的内容やその性質等に徴すると,原判決がその(弁護人の主張に対する判断)の項中で,「いかに投票依頼の相手方,依頼文言が被告人から指示されていたとはいえ、多数の選挙人に対し直接個々的に候補者への投票を依頼するという行為の性質上,相手方の返答に応じて候補者への投票獲得に有利なように配慮して適宜応答のなされるであろうことは容易に推認し得るところであり,証拠によれば現実にそのような配慮のなされたことが認められる」と認定説示しているとおり,右杉本の電話による投票依頼行為…中略…の実質は,所論のような単純な機械的労務とは到底認め難く,いずれも公職選挙法221条1項3号所定の選挙運動に該当することが明らかであるとともに,該金員が被告人から右両名に授与された時期や授受された際の状況等,とくに,被告人は右両名から領収証書等の証憑書類を一切徴取していないことやその授与金額の算出根拠も詳らかでないこと等を総合考察すると,該金員はいずれも原判示第二の一…中略…のとおり右杉本…中略…の運動に対する報酬をも含む趣旨で被告人から右両名に授与されたものであることが明らかであり,…中略…原判決には所論のような事実の誤認はない。